飯田哲也氏(野鳥 2017年9・10月号/No.818 6 抜粋)『環境にやさしくないメガソーラーの話』

弊社のアパート経営の屋根にも、ソーラー発電が乗っています。耐用年数は延びたと聞いていますが、所詮20年経てば、全国で巨大なゴミとなります。
環境に優しいと云う、美しい言葉に騙され、いや、実は金儲けになるならナンでもやるという浅ましき日本人の今を象徴しています。我が身を振り返り、ソーラーは間違い、美しく無い巨大ソーラー発電は、絶対反対です。(柴原薫)

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環境にやさしくないメガソーラー(*1)の話
クリーンで環境にやさしいはずの自然エネルギー「太陽光発電」が、一転、自然破壊につながり問題にもなっている。その背景にある要因と改善の道を考える。

日本中に広がるメガソーラーの背景と課題
文・飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)

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■メガソーラーの「光」と「影」

太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーは、無尽蔵かつ膨大なエネルギーを資源とするクリーンかつ永続可能なエネルギーとして、化石燃料や原子力に代わるエネルギーとして期待されています(*2)。

2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発事故を経験した私たち日本人にとって、また2015年12月に国際合意されたパリ協定が解決をめざす気候変動問題を考えると、エネルギーを原発や化石燃料から自然エネルギーに転換していくことは、避けることのできない重要な課題といえます。
ところが日本では、この数年間という短い期間のうちに太陽光発電があまりに急速に拡大してきたために、クリーンな代替エネルギーをしての「光」の側面だけでなく、その「影」の部分が注目されるようになってきています。「影」とは、主に「メガソーラー」と呼ばれる比較的大型の太陽光発電の建設に伴う、地域の自然や景観を破壊する恐れなどをさします。
本稿では、日本でメガソーラーの設置が急速に進む背景や現状を解説した上で、その課題を緩和し、解決しうる方策について提案します。

■日本で爆発的に普及した事情

2012年7月に日本で施行されたFIT法は、他の自然エネルギーに比べて太陽光発電を著しく拡大しました。2016年末までにFIT法のもとで拡大した太陽光発電は32GWとなり、すべての自然エネルギー発電の95%を占めています(図1)。これは、ドイツを越えて中国に次ぐ世界第2位の設置規模となります。
これほどまでに太陽光発電に偏った理由は、他の自然エネルギー(風力、小水力、地熱、バイオマス)にくらべると、太陽光発電は格段にリスクが低いうえに、短い期間で事業化できることがあります。すなわち、事業が成立ずるかどうかのカギとなる資源量の予測では、他のエネルギーが知見や経験、専門性に加えて慎重な事前調査が必要になるのに対して、太陽光発電は素人でも大きく外れることはありません。また、他の自然エネルギーはさまざまな規制や既存の権利関係をクリアする必要があるのに対して、太陽光発電は土地を確保する以外には、ほぼ何の規制も既存の権利関係も関係ありません。そのうえに、太陽光発電の普及が1990年代から始まった日本では、技術基準も整備され、製品の流通や施工等の経験も一定の積み重ねがすでにあったことから、速やかに事業化ができたという事情もありました。

■今後への提言

野鳥や生態系など自然保護を尊重しつつ、景観など地域社会とも調和しながら自然エネルギーの開発、とりわけ太陽光発電の開発をバランスよくすすめていく必要があります。
たとえばデンマークでは、風力発電に関して、地域社会も合意する形で土地利用のゾーニングを全土にわたって行っています。そこでは、まず風力発電に利用できない土地を重ね合わせながら最後に残ったわずかな土地が利用可能とされています(図6)。さらにそこから環境アセスメントが行われ、事業化の際には地域住民が最低15%は資本参加することが求められています。
国内でも、長野県など先進的な自治体では、急増する太陽光発電と地域社会・自然環境との調和をめざして「アメ」(誘導策)と「ムチ」(抑制策)などを組み合わせた条例などを定めているところもあります。 とくに自然保護の観点から見ると、メガソーラーの立地の多くは、土地規制が厳しい農地を逃れ、土地利用規制が緩い森林に向かっています。農林水産省も農山漁村再エネ法やソーラーシェアリングなど遊休農地などを自然エネルギーに利用する間口を整えてはいますが、腰が引けている感は否めません。むしろ、より積極的にすでに人の手の入った農地こそ優先して太陽光発電や風力発電の利用に誘導すべきだと考えます。たとえば農家や農業法人が行なう自然エネルギー事業は、「農業」の一つとして定議し、農地のまま取り組めるといった大胆な政策転換が必要な時ではないでしょうか。

太陽光発電や風力発電といった地域分散型の自然エネルギーは、従来までの大規模・集中型の発電所とは異なり、私たちにとって「新しいテクノロジー」が社会的に広がっていく入りロといえます。携帯電話やインターネットが普度する過程でマナーモードやプライバシールールなどを、議論を重ねながら定めてきた経験のとおり、「新しいテクノロジー」が社会全体に広がっていくときには「新しいルール」を合意し、定めていくことが欠かせません。こうした先行例の経験に学びながら、メガソーラーや風力発電についても、自然保護や社会環境と調和しながら普及していく「新しいルール」を創りあげていくことが求められている時だと考えます。

(野鳥 2017年9・10月号/№818 6 抜粋)

*1 メガソーラーとは、MW(メガワット)級の太陽光発電のことです。サブメガソーラーと呼ばれる数百KW(キロワット)から大きいものでは数百MW規模の太陽光発電事業があります。
*2 太陽エネルギーに由来する自然エネルギーは、太陽光・太陽熱・風力・水力・バイオマス・波力が代表的です。なお、地熱や潮力など太陽エネルギーに由来しない自然エネルギーもありますが、本稿では太陽エネルギーのみの記載に留めています。

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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長 飯田哲也(いいだ・てつなり)
1959年山口県生まれ。京都大学工学院工学研究科原子核工学専攻修士課程修了。原子力産業や安全規制に従事後、「原子力ムラ」を脱出して北欧での研究活動や非営利活動を得てISEPを設立し現職。持続可能なエネルギー政策の実現を目指し、提言・活動を行っている。多くの国や地方自治体の審議会委員を務め、世界中に幅広いネットワークを持ち、特に3.11以降、世論をリードするエネルギー戦略を打ち出す。2014年より全国ご当地エネルギー協会事務総長を務め、地域からのエネルギーシフトを進めるために全国を奔走中。著書に『エネルギー進化論』(ちくま新書)など多数

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